栞いろは歌  禅のことをもっと…

生也全機現 死也全機現(せいやぜんきげん しやぜんきげん)

臨黄ネット栞「せ」 生也全機現 死也全機現(せいやぜんきげん しやぜんきげん)

生きているときだけが自分の姿ではない。死んで棺桶に横たわる姿もまた、他に代え難い自分の尊い姿なのだ。どうして魂の抜けた亡骸などといえようか。……死の姿で対称的なのは、「涅槃図」に画かれた仏陀入滅の姿と、キリスト教の聖堂で見る十字架に掛けられたキリストの姿である。両者の死のあまりにも個性的な姿を見るとき、やはり聖者というものは、生前に見せた抜群のはたらきとともに、死を迎えてもまた凡人には見せられない個性を発揮しているのを感じる。一方は悟りの安らぎを湛え、他方は人類の罪を引き受ける代受苦の尊い姿である。

《原典・碧巌録/引用・西村惠信著『禅語に学ぶ 生き方。死に方。』(禅文化研究所)より》

写真 某寺蔵涅槃図